《プランセスものきにのある日の訪問日記》
~une intervention clownesque le journal de Princesse Monokini ~
訪問前夜
用意するもの
クラウンの赤鼻,衣装や靴,楽器類,メイク道具,マリオネットのカピ,訪問者のリスト,訪問先の住所,万全な体調と新鮮な気持ち・・・
当日
初めて訪問する病院に初めてのパートナーと訪問。
今日の訪問は14時開始。
12時30分にパートナークラウンと落ち合い、13時に病院担当職員と待ち合わせ。
15分早く病院に到着、売店前で缶ジュースをすすりながら、パートナーと病院内を見回す。大きなトランクを抱えた私たちは、忙しく働く職員や、点滴を引きながら移動する利用者の病院の日常風景から明らかに場違いに見えることだろう。
13時、担当職員に本日の訪問先である重症心身障害児病棟へ案内される。
今日は院内のお祭り「新春の集い」の日だ。
病棟内で職員や滞在者とごあいさつ
『こんにちは』
『よろしくお願いします』
みなさんにこにこと明るい。
挨拶を交わしているうちに訪問開始時間が刻々と近づいてくる・・・
すみません、私たち、そろそろ準備にとりかかりたいのですが、と後ずさりし、案内された控え室で急いで準備にとりかかる。
今日は初めて訪問する病院に初めてのパートナーと訪問。2日前に会って打ち合わせをした。訪問者のリストも確認した。一応の段取りはした。とにかく息を合わせ、何時も助け合おうと団結をはかる。
衣装を着て、簡単なメイクを済ませてから鼻をつける。
私はこの瞬間から〈プランセスモノキニ〉になる。
横のパートナーも準備ができているようだ。
14時
控え室の扉を開くとそこはみなさんの待つ会場。海の中に飛び込む気持ちで、でた。
バギーや車椅子に乗った60名以上の滞在者と30名はいたと思う職員たちが私たちを待っていた。
パートナーのウクレレ演奏と大きな背中に甘え、隠れながら登場した。
顔を横からぬっと出した瞬間、目の前の男の子と目があった。訪問の開始合図だ。
彼の目をじっと見てアイコンタクト。
目は微笑んでいる。
音声を発してみた。
返してくれたみたいだ。
口がかすかにだけど動いている。
わたしの手は隣の女の子とコンタクトをとっていた。フィジカルコンタクトだ。
全身で笑ってくれている。こういう時わたしの全身も動き出し反応してしまう。
ほっぺの肌がすべすべな女の子。すべすべだね、とさわる。
介護する職員の女性のもつい触ってしまうと、そこから肌さわりごっこが始まる。
楽しんでいる、わたしたちみんな。
水色の洋服を着た女の子はソーダー味
ほっぺの赤いあの子はチェリー味
と味見していたら、職員たちが『この子は何?この子は何?私は何味?』次々と聞いてきて、童心に返ってくれている。
きれいに刈っているあの男の子の髪の毛は、芝生のような肌触りでいい気持ち。
フィジカルコンタクト。触れることでイマジネーションが広がっていく。
歌をいっぱい歌った。息が切れたら、呼吸機から出てくる酸素を分けてくれた。
ウクレレを触って音を楽しんだ男の子
マリオネットカピを抱いて離さない人
ウクレレの曲に合わせ呼吸や瞬きでリズムを返してくれる子たち
コンタクト、歌、リズム、ここから無限の可能性が広がっていく・・・
筋ジストロフィー病棟へ向かう間、今井せんせと廊下を走った。楽しかった。
ほんとはいたずらして今井せんせの携帯電話を抜き取ろうと思ったら、
せんせのポケットと携帯電話がクリップでつながっていたから、せんせまで走る羽目になってしまったの。せんせごめんなさい・・・
筋ジストロフィー病棟ではブッチィーのウクレレに合わせてリズムコンタクトたくさんしたよ。
あの子とブッチィーとモノキニは3角形でつながった。
その瞬間、そこは特別な時空空間に突入する。
そこではウクレレの音とリズムだけがきこえている。
会えてよかった。ありがとう。また来てね。また会おうね。
訳すならばこんな会話をしているのかもしれない。
18時訪問終了
素に戻るまで要する時間30分+片付け
18時40分
お茶をご馳走になりながら医師職員と会談
19時
病院を後にする